3/18-29

最近少し忙しいのもあるけど、普通に更新が面倒になってきた。もうすぐ新年度だし、そんなに頑張らずに続けます。

 

雑記

春休み

もう1週間も残ってないんだけど!?とはいいつつ、しっかり2ヶ月間休んだ気もする。長期休みの予定がスカスカになることに対して謎の恐怖があり、遊ぶ予定を立てるのが苦手な割にはちょこちょこ予定を入れていったので、全く退屈しなかった。そういう意味では良い休暇を過ごせた気がするが、勉強ができていない……。勉強の予定がうまく回らないことなんて普通だとも思うのでまあいいけど、新学期からは頑張らなければ。

ここ数日は、やるべきことが溜まってはいつつも年度末的な忙しさはなくて、社会の忙しなさとは対照的にマイペースに過ごせている感じがとても良い。桜綺麗だし、新学期の授業は楽しみだし、好きな時期かもしれない。地元にいた頃は、この時期はまだ寒いので暖房が焚かれていて、たまに来る暖かい日の暖房の暑さが苦手だった。東京に来てからはそんなこともなく、快適に過ごせている。

新学期からは基本的に全て対面授業になるらしい。座学はオンラインの方がありがたかったんだけど、対面は対面で楽しみな部分もある。特に来学期はコマ数が少ないし、興味のある授業しか取らずに済むので、憂鬱さはない。いざ始まってみたらわからないけど。

 

感想

樋口恭介編『異常論文』

1ヶ月くらい前に7割くらい読んで満足してしまい、全部読んでから感想を書こうと思っていたけど、当分読まなそうなのでもう書いてしまう。

気鋭のSF作家たちが、論文のような体裁を取りながら虚構の言説を述べ立てたもの。「異常」の名の通り相当ぶっ飛んでいるものばかりで、めちゃくちゃ面白い。虚実が入り混じった作品が好きな自分には刺さった。巻頭言が無料で読めるが、これもかなりキマっている。

www.hayakawabooks.com

以下は特に気に入ったもの。

青島もうじき『空間把握能力の欠如による次元拡張レウム語の再解釈 およびその完全な言語的対称性』

これが一番好きだった。レウム族という少数民族がもつ特殊な言語体系の話。集団全体に遺伝的な聴覚異常があるため、視覚言語が高度に発達している。調査対象となった双子は一方の空間把握能力が欠如しており、それゆえにレウム語を独自に発展させるのだが、それが脳構造や三半規管まで変化をもたらし、4次元空間を認識できるまでになる。我々には理解し得ない次元拡張レウム語は言語や人類の可能性を感じさせる。それを唯一理解していた双子のもう一方が亡くなって、もはや世界に理解できる者が存在しなくなってしまう儚さも含めて良かった。「ゆる言語学ラジオ」の影響で最近言語学に興味があったのもあり、学術的なレポートとして興味深く読めた。架空だけど。

松崎有理『掃除と掃除用具の人類史』

人類の歴史を「掃除」という観点のみから描き出す。人類生活における掃除がいかに本質的かという論点で、序盤は確かになあなんて思いながら読んでたのだけど、後半に行くにつれてぶっ飛んでいって、最終的なぶっ飛びようが面白かった。マイクロブラックホール掃除機て。

柞刈湯葉『裏アカシック・レコード

世界の全ての事象が記録されているのが「アカシック・レコード」だけど、世界の全ての嘘が記録されているのが「裏アカシック・レコード」。作中ではその性質に関する議論に終始するのだが、ミステリー的でもあり退屈しない。最後の一文がかっこよかった。

難波優輝『『多元宇宙的絶滅主義』と絶滅の遅延———静寂機械・遺伝子地雷・多元宇宙モビリティ』

反出生主義の思想が拡張された、宇宙全体の徹底的な絶滅が「救済」に繋がるとする思想の話。反出生主義の本を読んだばかりだった自分にはタイムリーだった。ベネターを批判しつつ、それなりに妥当性のある論を展開していて、全宇宙の絶滅に至ることはできないというジレンマに陥るところまで含めて鮮やか。

 

作家陣には、やはりと言うべきか、多かれ少なかれ学術研究を経験している人が多くて、そういう人がガチで虚構を書いたらどうなるのかというのを見せつけられた。かなり人を選ぶ作品だとは思うけど、こういうものを出版してくれるのは嬉しい。

 

逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』

別にこの世界情勢だから読もうと思ったわけではなく、2月頭あたりに買っていたのをたまたまこのタイミングで読んだだけ。

第二次世界大戦中のソ連が舞台。戦火に巻き込まれて家族と村を失った少女セラフィマが、復讐を果たすため、狙撃兵となって戦いに身を投じていく話。生と死の狭間に置かれた狙撃小隊の少女たちの葛藤や、戦時下において単純に善悪を切り分けられない複雑さを克明に描き切っていて、胸に迫るものがある。その一方で、キャラクターたちは言ってしまえばアニメ的で、頭にスッと入ってくる。カタカナの人名が多い作品は往々にして人を覚えられないがちだけど、本作は全くそんなことはなかった。アクションシーンもめちゃくちゃ臨場感があって、史実に沿った構成でありつつもエンタメ性がものすごく高い。表紙絵に雪下まゆさんを起用しているのも凄い。広い層にリーチしたいという早川書房の熱意を感じるし、実際それに耐えうる作品だと思う。

とにかく主人公たちが魅力的で愛着が湧いてしまうのだけど、題材が題材なだけあって、それが怖い。そのキャラクターを好きになるほど死んでほしくなくなって、死亡フラグに敏感になる。彼女らが自分のバックボーンを語ったり、未来の話をし始めたりすると本当にハラハラした。そういう作品を久しぶりに読めたかも。

その中でもセラフィマが本当に魅力的すぎる。特に後半の尖りに尖った姿。自分を嘲った歩兵にやり返す場面、捕虜を尋問する場面、自分が尋問される場面…… カッコ良すぎて痺れまくっていた。

ラストにかけての展開も圧巻で、一気に読まされてしまった。こんなに読み終わるのを名残惜しいと思った作品は久しぶりだし、今はこの余韻を消したくなくて他の作品を読みたくないという謎の状態になっている。もう一回読もうかな。美しくまとまっているので続編やスピンオフは全然望まないけど、ファンアートやifの2次創作はたくさん見たい……。

ここまで持ち上げておいてあれだけど、戦争という場でキャラクターを記号的に消費することには抵抗もあって、難しいなあという気持ち。