2021年マイベストアルバム20選

年末なので、今年聴いた音楽を総括する。今年知った(今年発売とは限らない)アルバムやEPのうち、特に良かった20枚を選出してみた。なんとなく「J-ROCK」「ボーカロイド」「洋楽」の3ジャンルに分けてしまえるかなあと思ったんだけど、必ずしも適切ではないです。

 

 

J-ROCK

ヒトリエ / REAMP

REAMP (通常盤) (特典なし)

ヒトリエが3人体制になってから初めてのアルバム。フロントマンを失った中でのもがきが強く感じられながらも、衰えないどころか鋭さを増すサウンドにめちゃくちゃ興奮した記憶がある。wowakaさんの曲ではないというのはわかっても、通じるところを感じるし、音は変わらずにヒトリエなので、続けてくれてありがとうという気持ちになった。去年の12月に『curved edge』が配信されてからずっと聴いてたし、アルバムが出てからは特に『ハイゲイン』と『YUBIKIRI』を聴いてた。YUBIKIRIはヒトリエらしくないと言ってしまえばそうだけど、MVも歌詞も泣ける曲。


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ヨルシカ / 創作

創作

昨年に出たフルアルバム『盗作』とストーリー的に繋がっているEP。前作は激しめの曲が多かったのに対して、こちらは穏やかめな曲でまとまっている。中でも『春泥棒』はYouTube MusicのCMソングになっていたりもして、聞く機会が多かったように思う。アコギ主体の曲で、そこまで難しくもなかったので、5〜6月頃に頑張ってコピーしていた。全体的には、ボーカルのsuisさんの表現力が作品を重ねるごとに上がっている印象を受けた。ヨルシカの初期の曲は正直そんなに好きじゃなかったんだけど、盗作〜創作あたりの曲を聴いて考え直したし、実際2021年で1番聴いたアーティストになった。5〜7月頃はヨルシカばかり聴いていた。

 

ストレイテナー / Crank Up

Crank Up (通常盤)

ストレイテナーの真価は、ホリエアツシさんが作る切ないメロディだと思っていて、今回もそれが光る1枚だったと思う。『宇宙の夜 2人の朝』みたいな激しい曲もいいけど、『群像劇』『流星群』『七夕の街』の3曲が本当に好きだった。『流星群』は、最近聴いた曲の中で1、2を争うくらい好きかもしれない。サビの綺麗にハマった打ち込みと、歌のメロディとは違うメロディを奏でるリードギターが良い。『七夕の街』は阿佐ヶ谷の七夕まつりがモチーフらしい。ホリエさんが弾き語りで以前披露していたのを知らなくて、今回初めて聴いた。七夕がテーマの曲って意外とない気がしていて、そういう意味でも新鮮だった。同世代バンドACIDMANの『灰色の街』と曲名が近いので対比したくなるんだけど、歌詞の内容がなんとなく良い感じに補完されている気がして勝手にエモくなった。

 

GRAPEVINE / 新しい果実

【メーカー特典あり】 新しい果実 [初回限定盤] [CD + 2LIVE CD] (メーカー特典 : ポストカード 付)

今年知ったバンドで、これは今年出た最新アルバム。97年のメジャーデビューからずっとコンスタントにアルバムをリリースし続けていてすごい。『目覚ましはいつも鳴りやまない』みたいなポップでおしゃれな曲もありつつ、『ねずみ浄土』のような実験的な曲もありつつも、元来のオルタナティブロック的な部分は失われていなくて、すごく洗練された一枚だという印象。特に『Gifted』の、鬱屈としつつも美しさを感じさせる曲と歌詞は唯一無二だと思う。


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これ以外では2008年に出た9thアルバム『Sing』も良くて、特に『CORE』という曲のシリアスな感じが好き。ちょっとRadioheadの『The National Anthem』ぽい。


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mol-74 / mol-74

mol-74(初回生産限定盤)(CD+DVD)(特典なし)

mol-74は今年最も聴いたバンドの一つで、これは2019年のメジャーデビュー時に出たベストアルバム的な1枚。透き通ったボーカルと、引き算的に作り込まれた美麗なサウンドが特徴。自分がこれまでにはまってこなかったタイプのバンドではあるけど、一気に引き込まれた。すごく冬〜春のイメージがあって、その時期に綺麗な風景を眺めながら聴きたい。

『Saisei』はmol-74の中で一番好きな曲。イントロのベースとサビの疾走感が良い。この曲が収録されているEP『▷ (Saisei)』も6曲でのまとまり方がすごく良いので、是非ともEPを通して聴くべき。


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aquarifa / 月明かりのせいにして

月明かりのせいにして

Apple Musicで偶然出会ったバンド。凛として時雨や9mm Parabellum Balleあたりの残響系にかなり近そうな音楽性で、硬質なギターサウンドと儚げなボーカルがよくマッチしている。


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今年は「シューゲイザー」というジャンルに出会った年だった。その説明はwikiに譲ることとして、そのカタルシス的な音楽体験にかなり心酔した。ということで以下のJ-ROCKは全部シューゲイザーバンドからの選出です。

 

THE NOVEMBERS / THE NOVEMBERS

THE NOVEMBERS

バンド名は前から知っていたけど、今年になって初めてちゃんと聴いた。自らのバンド名を冠した2007年の1st EP。作品名としてバンド名をそのまま使うって、アニメの最終回みたいでかなりアツいと思うんだけど、最初にそれをやっちゃうのが凄い。初期衝動的な爆発力のある曲ばかりでカッコいい。多方面に怒られそうな自分の雑な印象として、最近のノーベンバーズは少しヴィジュアル系に寄っている気がしていて、それよりは初期のこういう音楽性の方が好きかもしれない。ただ、2016年に出た『Hallelujah』もかなり好きなので、最近のも聴き込んだら評価が変わるかも。

 

きのこ帝国 / フェイクワールドワンダーランド

フェイクワールドワンダーランド

インディーズ時代最後の作品で、アルバムとしての完成度がとてつもなく高い。轟音のギターと、リバーブのかかったボーカルが陶酔感を感じさせる。ボーカルの佐藤千亜妃さんは同郷で、勝手に親近感が湧いている。『東京』もめちゃくちゃいいけど、『桜が咲く前に』は実際に共感できる部分も多くて、かなり好き。このアルバムに収録されている曲ではないけど。MVの舞台が地元で、同郷で良かったなあという気持ちにさせられた。


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羊文学 / POWERS

POWERS (DVD付) (特典なし)

今かなり勢いを増してきているバンド。音楽性としてはきのこ帝国にかなり近い。気だるげなボーカルに反して音はかなりパワフルで、そのバランス感覚が良い。クリスマスソングはそんなに知らないけど、『1999』はその中の一つとして今一番好きと言える。


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クレナズム / Touch the figure

Touch the figure

シューゲイザーとJ-POPの融合という感じの若いバンドで、流行らないかなあと密かに期待を寄せている。10月に出たこの最新作は割とポップ寄りだと思うけど、『酔生夢死』なんかはギターの音がかなり好き。


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揺らぎ / For you, Adroit it but soft

For you, Adroit it but soft

今年出たフルアルバムから一番良かったものを選べと言われたらこれかもしれない。静と動のコントラストが飽きをこさせない作りになっていて、浮遊感のあるボーカルと轟音のギターが高い水準で調和している。(同じようなことばっかり言ってんな…)間違いなくシューゲイザーなんだけどそれ一辺倒ではなくて、とにかくかなりレベルの高い作品だと思う。素人がいろいろ言ってもあれだけど、世界水準のバンドなんじゃないか。


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ボーカロイド

ツミキ / SAKKAC CRAFT

SAKKAC CRAFT

友達に教えてもらって知ったボカロPの1stフルアルバム。異常なほどに音が詰め込まれていて、その情報量に圧倒されてしまう。ボカロだからこそできることな気がしていて、その振り切れ具合が清々しい。曲名や歌詞にも独自の美学が感じられる。特に『スイサイ/アンブレラ/ロクガツ/ドライフラワ』はマスロックど直球で一番好き。ドラムの手数が異常すぎて、人間に叩けるとは思えない。

 

Eight / コバルトブルーの白昼夢

コバルトブルーの白昼夢

好きなギター配信者の配信で知った。長く入手が難しかった本作が今年サブスクで聴けるようになったということで、非常にありがたい。シングルコイルのジャキジャキしたギターの音が大好きなので、自分にはどストライクだった。息の詰まるような緊迫したサウンドに高音が際立ったミクの声が乗っている。どんな音作りが好きですかと聞かれたら、『とても素敵な六月でした』を挙げたいくらいには好き。


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こんにちは谷田さん / in the margin

In the margin

シンガーソングライターとして、ヨルシカのベーシストとして大活躍中のキタニタツヤがボカロP「こんにちは谷田さん」名義で今年出した配信アルバム。過去にコンピレーションアルバムに提供したカバー曲などを集めたB面集的な作品になっている。今よりもthe cabsあたりのオルタナ/ポストロック/マスロックの影響が顕著で、こちらの方が自分は好き。ギターがめちゃくちゃ複雑で音作りも良くて、これでギタリストとして活動してるわけじゃないのがヤバすぎる。上に挙げた『とても素敵な六月でした』のカバーも最高。

 

以下3枚は今月の記事(雑記)でも取り上げていて、言うことがほぼ被ってしまうのでそちらを参照。最近知ったものほど記憶に新しくて、年間ベストには載りやすくなっちゃうよね。

mao sasagawa, メル→

年末進行 - メッセージボトル

ichica→

ポケモンやりすぎ - メッセージボトル

mao sasagawa / Graduation

Graduation

 

メル / Funeral

Funeral

 

ichica / アッシュ

アッシュ

 

洋楽

Radiohead / OK Computer

OK Computer[輸入盤CD](XLCD781)

前から知ってたし、今さら?って感じだけど、Radioheadが好きな友達の影響もあって改めて聴き直して、ハマり直した。もともと"No Surprises"のもの悲しい雰囲気が好きだったんだけど、"Paranoid Android"のヤバさを再発見した。乱高下を繰り返すような複雑な曲展開で、特にジョニー・グリーンウッドのギターが凄い。キルスイッチを織り交ぜたバキバキに歪んだギターは唯一無二。(言わずと知れた名曲なので、わざわざ自分が語り直すのが恥ずかしい)


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Sigur Ros / Takk...

Takk... [Analog]

前から知ってはいたけど、このバンドもまたシューゲイザーであると言う認識を得て、改めてハマった。アイスランドの大地を感じさせる壮大さがあって、美しいという言葉に尽きる。日本語と英語以外のボーカルをほとんど聴かないので、アイスランド語(とホープランド語(造語))という自分が全く理解できない言語で歌われることにも新鮮味を感じる。歌詞が頭の中でノイズになってほしくない時ってたまにあって、そういうときに聴きたくなる。一番好きなのは"Glósóli"という曲。


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My Bloody Valentine / Loveless

loveless

シューゲイザーというジャンルにおける金字塔(らしい)。正直、まだ自分はこのアルバムを掴みきれていない。ギターの轟音とボーカルの浮遊感に飲まれて、気づいたら曲が終わっている感じ。ただただギターをかき鳴らしているだけにも聴こえるし、計算された緻密な音作りがされている感じもして、聴くたびに印象が変わる。なんというか、自分が他の人に同調してこれは名盤だと言っても薄っぺらい評価にしかならない気がする。シューゲイザーリスナーのこのアルバムに対する思い入れは異様なほどなので、自分もそれをわかりたいという気持ちがある。これから自分の中でこのアルバムの位置付けがどうなっていくんだろうという期待も含めて、ここに書いておく。

 

まとめ

今年の自分の音楽体験は、「mol-74とシューゲイザーとの出会い」「エレキギターの購入」「ボカロ文化への回帰」にまとめられると思う。

 

mol-74との出会いはおそらく去年の11月ごろで、そこからじわじわとハマっていって、今年はずっとコンスタントに聴いていた印象。mol-74は(少なくとも狭義の)シューゲイザーではないんだけど、シューゲと出会ったきっかけは多分mol-74。Apple Musicのmol-74のステーションで流れてきたクレナズムの『ヘルシンキの夢』に心を掴まれて、そこから自分の中でmol-74とクレナズムが同一ジャンルであるかのような印象のまま他の色々なシューゲバンドを見つけていったように思う。その際にはこの↓アカウントにかなりお世話になった。

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ロック音楽のジャンル名って正直定義や違いがよくわからないし、何か一つの言葉で当てはめてミュージシャンの立ち位置を決定づけることにどれほどの意味があるのかわからないけど、にわかながらも、ある一つのジャンルに出会えたということは大きかった。

 

8月にはエレキギターを購入した。自分でエレキの音を出すようになってみて、よりギターの音に意識がいくようになった気がする。どんな演奏でこの音が出ているのか、どういう種類のギターだからこんな音色になっているのかというのがわかってきて、確実に自分のリスニングに深みが増した。

 

今年は、様々な点でボカロ文化へ回帰した年でもあった。中学生でボカロに出会ってからずっと触れてきたコンテンツではあるけど、今年はより一層そのムーヴメントの中にいた感覚がある。
一つにはヨルシカやヒトリエにハマっていたことがある。ボカロではなくてボカロ出身のロックバンドだけど、この人たちを聴くときには常にボカロシーンとの繋がりが念頭にある。
プロジェクトセカイの台頭も大きい。じんの『ステラ』やDECO*27の『needLe』など、大物ボカロPの楽曲提供を今年になって若干のタイムラグをもって知り、そこから煮ル果実やぬゆり、ポリスピカデリーなどの比較的若いボカロPとの出会いもあった。
あとはエレキギターを始めたことも実は大きくて、「弾いてみた」文化との近さからいわゆる「ボカロック」への熱が高まった。最初にコピーしたのはじんの『サマータイムレコード』だったし、ギター配信からEightやすりぃ、Orangestarの『空奏列車』なんかを知った。
ますます勢いを増している「ずっと真夜中でいいのに。」の新曲たち、花譜や理芽といったバーチャルシンガーとの出会い、CeVIO AI「可不」のリリース、じんのシンガーソングライターとしての再始動など、ボカロから派生した音楽シーンで、自分の中で何かと話題が尽きなかった。
この↓ツイートも印象的だった。

米津玄師やYOASOBI、Adoの台頭によって、J-POPシーンとボカロシーンの接近がますます加速している昨今、プロセカまわりが引き起こしたボカロブームの再来もあって、今後の展開にすごく期待しているところ。

 

BUMP OF CHICKENの『Flare』にいたく感動してしばらくBUMPばかり聴いていたこと、友達の影響でサブスクでなくフィジカルなCDを買って所有感を満たすことの良さを再認識したことなど、他にもいろいろ言及できることはあるけど、とにかく今年は音楽的に充実した年だった。

 

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