4/21

羊文学 LIVE 2024 "III"

4年前くらいから細々と追っているつもりではいるが、ライブは初めて。開場時間前に余裕をもって到着し、ポスターの特典付きのCDと狙っていたTシャツを買った。この夏にガシガシ着るぞ。開演前にマイブラのto here knows whenとかニルヴァーナのRape meとかが流れていて良かった。横アリで流していいんだ。

開演、イントロから轟音。ポップな歌メロや歌詞に凶悪なオルタナサウンドが重なっているだけで嬉しくなる。インディーズから羊文学としてここまでやってきて、今この音楽性でアリーナを埋めているという事実が嬉しい。デカいステージももう様になっているように見えた。

(特に最近の)羊文学はシューゲじゃないだろ...と思っていたが、一周回ってやっぱシューゲかも...とも思えてきた。シューゲイズバンドというラベリングは正しくないと思うけど、特にAddictionとか、マイブラから流れてきたエッセンスを感じる。


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GO!!!なんかもライブ映えしてすごく楽しかったんだが、その次の「人間だった」が良かった。ポエトリー的なパートからの全て解放するようなバンドアンサンブルがめちゃくちゃ気持ちよかった。

一番よかったのは「光るとき」。やっぱり名曲すぎる。普通に泣きそうになった。歌詞がすば抜けて良い。


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ところどころテンポが遅くなる気がしたんだが、フクダ氏が不調だったっぽい?不満というほどのことはないけど、次は万全の形で、あと出来れば小さい箱で聴きたい。

 

視覚思考 vs 言語思考

インターネットでよく話題になる言説。ゆる言語学ラジオが取り上げていて、それなりに反響を呼んでいた。本編で引用していた本によれば「会話をするときに、脳の視覚を司る部位が活性化する人と言語を司る部位が活性化する人がいる」とのこと。それが人を異なる思考様式をもつ群に分けられることの傍証らしい。そのこと自体はまあ納得できるし面白いんだけど、そこから先のラジオ内でのトークが物事を単純化し過ぎてる気がして、眉に唾をつけて聞いてた。二分化アンチ。

一旦そういう言説を認めるとして自分がどうかと言うと、まあ言語思考をしている気がする……。ただ特段言語化が得意なわけではないし、何か考えるときに視覚的なイメージが浮かばないわけでもない気がする。方向音痴だけど。結局視覚思考と言語思考の間のグラデーションだという話に落ち着くんだろうが、なんか納得いってない。まあまず引用元の本を読めという話ではある。

 

布団の重み

暖かくなってきて布団が軽くなるとともに、はじめのうちは眠りが浅くなる。ここ2日くらいで徐々に深く眠れるようになってきた。

柳沢正史の言葉を間に受けて割とちゃんと寝るようにはしてるんだが、快適な環境を整えるという部分が難しい。温度は特に今の時期難しいし、音も。引っ越して以降、基本的には騒音で困ることはないんだが、たまに昼前まで寝ようとするとどうしても日が昇ってから上階の音によりどこかのタイミングで起こされてしまう。まあ、ちゃんと健全な時間に寝起きしましょうということで......。


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ガールズバンドクライ

3話まで観た。やっぱり面白い。

安和すばるの演技にちょっと不安になる瞬間があるんだが、それさえもいい気もする。この作品には色んな点でオルタナティブであってほしいと思っているがゆえに(?)。そもそも普段アニメの演技に慣れすぎているのかもしれない。

アクターズスクールって高校通いながらとか、卒業後に専門学校的な立ち位置とかで通う感じじゃないんだ。俳優を目指しているわけじゃないのに高卒認定が貰えないスクールに通っているすばる、人間としてのリアリティがあってかなり好きになった。

仁菜といい、普段の言動から育ってきた環境がなんとなく想像できるような描写の仕方が良い。個人の過去のエピソードとか色々掘る余地が残されていそうだが、必ずしも全部回収しなくてもいいかなとも思う。まあ、アニメ終了後も色んな形で展開が続いていく作品になればいいな。

すばるが仁菜に好きな音楽を聴くシーンで、当然のようにバンドとボカロが並置されていたことになんかグッときた。市民権を得ている。

突如現れた3Dゴシック体の「日曜の昼」、さすがに面白い。

 

誕生日

だった。増えていく数字にもはや嬉しさはないが、気にかけてくれる友人がいることがとても嬉しい。当日は特に誰かに会ったりはしていないが、靴を磨いたりケーキを買ってきたり久々に湯船に入ったり、積んでたスキップとローファーを読んだり。自分で自分の機嫌を取るような過ごし方をした。大人になっ(てしまっ)たなと思う。

 

スキップとローファー

最新刊を読んだ。登場人物のみんなが可愛くてしゃーない。この漫画は全員に感情移入できるからすごい。みんな幸せになってほしいと思うし、俺も幸せになりたいと思わされる。

江頭ミカの自意識の強さが本当に愛おしい。ナオさんとの関係もいい。ナオさんの「絶対」の言葉、普通に自分も勇気づけられてしまった。

風上先輩や花園先生にも光を当ててくれたのが嬉しかったな。志摩くんの家庭の話は心がヒリヒリするから早く円満に解決してほしい。

美津未の地元のモデルが石川県珠洲市であること、作者の高松さんの実家も被災したことを知っていたたまれない気持ちになった。こういう時でないと思いをかけられない自分は薄情だなと思ったりもするが、この作品を読み続けていたことは良かったと思う。

4/14②

ガールズバンドクライ

気まぐれで見たMVに興味を惹かれたのでアニメの方を観てみたら...めちゃくちゃ面白い!高校を中退して単身上京してきた主人公をはじめ、何かとギリギリで生きている少女たちがバンドを組んで...という話らしい。決まったレールを外れて自分の信念の通りに生きるという物語がこの歳になって効き始めている。自分に重ねるのはさすがに自惚れすぎだと思うが、実際ちょっとある。川崎という舞台設定もいい。今度行こうかな。

映像面では結構特徴的な3DCGを使っている。人の動きにディズニー映画的な(?)テイストの躍動感があって、一般的なCG特有ののっぺり感がない。表情も豊かで可愛い。演奏シーンは楽器の重さを感じられるのが気に入っている。こういう姿勢・弾き方になるよねという実感と合っていて、今までのバンドアニメでは得られなかった映像の楽しさがある。とはいえ人を選ぶCGな気はするが、自分は好き。


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Aメロの桃香さんがとても穏やかな顔をしているのが良い......。この曲案外簡単でコピーしやすいのも嬉しい。


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0:37あたりのキーボードの動きがちょっと好きすぎる。

 

やっぱりぼざろやMyGO!!!!!と比較したくなってしまうんだが、今のところガルクラがダントツで好きだ。映像については上記の通り。内容について、登場人物たちのネガポジ含めた感情のぶつかり合いを描く作品という点では、MyGO!!!!!にあった不満が今のところない、というのが現状の評価になる。というのは、MyGO!!!!!に男性が全く描写されないことがどうも引っかかっており......。別にそういう作品があることは全然良いと思うんだが、これは別の世界の話なんだなと感じて一気に自分から遠ざかってしまう。バンド文化を取り巻く環境も我々の住む世界とかなり違うっぽい。なんだろうな、ファンタジーにするなら振り切って欲しいという気持ちがあるのかもしれない。ガルクラはあくまでも現実世界を描こうという意識が伝わってくる。

 

楽曲も良いんだよな。アニソンとロックを接続するような足し算的な音像。普段シューゲとかを聴くときとは全く違う脳の部位で聴いている気がしていて、一方の楽曲群にハマっているときはもう一方が全く聴けなくなる。その結果ほぼトゲナシトゲアリの曲しか聴いていないのがここ数日。

こういう曲のダサさクサさってとても大事だと思っていて、その点で下の「爆ぜて咲く」とかMV含めてすごい。1:20辺りとか笑っちゃうくらいダサいのに1曲通してかっこよすぎる。ダサさとかっこよさって矛盾なく両立するよな......。どう説明したらいいのかは分からない。演奏シーンは映像作品としてエグい領域に達してると思います。


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とにかく、まだこういう作品にハマって素朴に楽しめることが嬉しい。良いシリーズになってほしい。切に。

 

親知らず

先週の火曜に抜いた。去年の12月に炎症して発熱して、そこから4ヶ月引っ張っての受診。もちろん気が重くてやっていなかったわけだが、意を決して行ったら30分くらいで終わった。そんなもんなんだ......。歯科医の側が抜歯に慣れすぎなのか、患者の側が重く捉えすぎなのかわからない。

 

海がきこえる

渋谷でリバイバル上映を観た。ここ1〜2年の自分のモードによく合う良い作品だった......。客観的には些細に見えるような出来事でも、当事者たちにとっては劇的な時間だったりする。ネガティブな感情や軋轢も、時間の経過によって良い思い出に変わったりする。保坂和志的なメンタリティを感じたけど、まさに同時代か。(こういうのが「エモ」として安易に消費されるのかと思ったら無性に腹立ってきた。そんなこと考えなくていい。)

初見だと思っていたんだけど、断片的に知っているシーンがあった。確かに小さい頃テレビで流れてたのを観たわと後から気づいた。特に松野がメガネを自分のワイシャツの胸で拭くシーン。メガネは丁重に扱うものという意識があった当時の自分にとって、そんなことしていいんだと妙に印象に残ったことを覚えている。武藤里伽子とかではなく松野豊が一番エロい。

ラストの吉祥寺で再会するシーンは良すぎたな。僕もそれやらせてもらってもいいですか?

4/14

2月に引っ越しをした。大学入学時に上京したとはいえ、ずっと親族の家に住んでいたので初めての一人暮らし。一つ目に内見をした部屋で確定させてしまってから、あれよあれよという間にことが進み、気づいたら契約の類いが全部済んでしまっていた。暮らしをやっていくぞという覚悟が固まらないままになんかひたすら戸惑ってた。

はじめのうちは家具家電や生活用品を揃えつつで何かと忙しかったが、さすがにもう落ち着いてきた。色々危惧していることはあったが、案外大丈夫だ。今はとにかく自己効力感が高い。実家や親族の家に住んでいたときは、インフラの契約やら家具家電の選定・配置やらは自分がやるものではなくて、今思えば不満が多かった。可能な限り自分の好きにしようにも、家の広さも歴史も自分の身体感覚の範囲を優に超えていて、全然コントロールできる気分になれなかった。今回全ての契約を一から自分で決めたことによって、自宅に関するあらゆることが自分の責任であるがゆえに、かえってすごく気持ちが楽になった。自分の暮らしをコントロールできている感覚、かなり充足感に繋がってる。自炊も意外に楽しいし、順調な滑り出しだ。

 

Blurred City Lights - 天使のいない街で

本当に良い。現行の和製シューゲイズバンドを一つ選べと言われたら、迷いなくBCLを選ぶ。リリースがちょうど引越しの時期と被っていたので、記憶がガッチリ結びついた。数ヶ月後、数年後に聴き直したときにはこの時期のことを思い出すと思う。

 

エモ

マイブーム。去年の11月からずっっっと聴いてるひとひらからの流れで、ANORAK!、くだらない1日、downtあたりのEMO(イーモゥ)バンドに手を出し始めた。滲み出るナード感、とても馴染む。


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ライブ

なんかいっぱい行ったな。もう時間が経っちゃったので、記録だけ。

1/21 (日) Umisaya 2nd Single "GLW" release party @Rinky Dink Studio 下北沢
出演者: Umisaya、Süden、Laget's Jam Stack、Hoboken Surprise、LESTER、雪国

2/3 (土) ONLY IN DREAMS @ 下北沢THREE
出演者: Sept.、Beachside talks、玻璃校了、ノウルシ

2/7 (水) Downtown channel vol.5 @ 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
出演者: UEBO、倉品翔、THREE1989、WINO

3/17 (日) ひとひら「つくる」Release Tour @ 下北沢ERA
出演者: ひとひら、さよならポエジー、kurayamisaka

4/6 (土) くだらない1日「どいつもこいつも」Release show @ 下北沢SHELTER
出演者: くだらない1日、ANORAK!

1/14

今年の抱負、マルチタスクをこなせるようになること。喫緊の締切がないようなタスクが思うように進まなかったのが2023年の最大の反省点なので。あとは日々のノルマを設定した。確実に毎日クリアできるようなものではないけど、それを目指すことで良い感じの生活習慣が回りつつある。

衝動的にスマホTwitterアプリを消したことも相まって、なんとなく精神状態が良い。ブラウザで見てはいるけど、タイムラインを追う面倒さが大きいので時間の浪費はかなり減った。はず。

 

近藤信輔『忍者と極道』

読んだ。描写の圧が強くて疲れてしまって今まで一気読みできてなかったけど、今回は達成した。面白いセリフを見るのが目的みたいなところはある。

 

小川哲『君のクイズ』

クイズ大会の決勝戦における対戦相手の不自然な正答の真相を探る過程で、クイズというものの本質にも迫っていく。謎の真相よりもむしろ主人公にとっての競技クイズのあり方が明かされていくのが面白かった。クイズに回答することは単に暗記した事項を答えることなのではなくて、その背後には人生の1ページを振り返る過程がある。クイズに正答するのは、ある意味で人生を肯定されることなのだと。自分の中に少なからずあった競技クイズプレイヤーに対する侮りみたいなものが無くなった。

 

タニタツヤ - ROUNDABOUT

ROUNDABOUT (初回生産限定盤) (特典なし)

1/10リリースのニューアルバム。既にシングルとして、あるいはデモ版としてリリースされていた曲が多かったので、前作にあったようなコンセプト性は感じなかった。単に「青のすみか」「月光」「スカー」と大好きな曲が揃っているのでそれだけで聴ける......というのが一聴しての感想だったけど、聴いているうちに、特に後述のライブのMCを聞いてからじわじわ良くなってきた。

コンセプトという点を言うなら、1曲目の「私が明日死ぬなら」で既にそれは完成されている。MV中に一瞬出るメッセージ、渋谷の広告、ライブMCで常に「逃げ場としての、人生の伴奏としての音楽を広げたい」という指針が一貫している。内省なのか訴えなのか絶妙なラインの歌詞とバラエティに富んだ曲調・アレンジで、日々の様々な局面に寄り添える作品になっているんだなと思った。


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タニタツヤ Japan Tour "UNFADED BLUE (Re-colored)"

セトリネタバレあり。

申し込んでからライブ当日までの間に、気づいたら紅白歌手に登り詰めていた。随分遠いところまで来たね。そんな昔から追い続けていたわけではないですけれども......。

一曲目「スカー」からフルスロットルで、次ぐ「悪魔の踊り方」では観客席にマイクを向けられ合唱。さすがに楽しかった。スマホ撮影可なのもあってか、客のノリは良いけど聴き方は全然自由でよくて(フェス常連の邦楽ロックバンドにありがちな右手謎グッパーに抵抗感がある)、良い雰囲気の客席だなと思った。本人も言及してたけど、同じNHKホールが年末の時からすごい変わりようで不思議な気持ちだった。NHKだからといって会場もお堅いわけではなく、演出はゴージャス。これまでに経験したホールでのライブは、演者との距離もあってどこか一歩引いて観てしまうことが多かったんだけど、今回は完全に没入できたな。

ホーンセクションは数曲だけ入るのかと思っていたけど、ガッツリ半分以上は入っていたはず。元々のアレンジにホーンが入っているのはおそらく「Stoned Child」「化け猫」「Ghost!?」くらいのもので、新鮮なアレンジが満載だったのも満足度が高かった。クライマックスというべき「私が明日死ぬなら」は、リードギター抑えめ、ストリングスの主張強めで、音源で聴いた時点では割と典型的なポップソングに寄っているなという気がしていたけど、会場で聴くとしっかりオルタナだった。ラスサビ、ステージにライブのモチーフの手の像が現れる演出はかなり込み上げるものがあった。その後のMCでキタニは「自分の曲を先頭にして音楽一般というものを広く普及させていく宣教師になりたい」ということを言っていた。凡庸な言葉ではなくて、彼が普段から考えているであろう彼自身の言葉だったためにすごく入ってきたし、聞けてよかった。その後に演奏された「クラブ・アンリアリティ」や「逃走劇」はこのライブのための楽曲なんじゃないかと思えた。ラストは「青のすみか」。青色に満ちたステージ、全身で感じられる会場の熱気、そして紅白を経てめちゃくちゃパワーアップした演奏……。夢心地だったな。

正直アンコールがないのが惜しかった!今までにないくらい一瞬に感じられたライブだった。5月の武道館も絶対に行くぞという気持ちに。

 

引越し

本当は12月の頭から動き出すつもりだったんだけど......。もういい加減繁忙期に突入しかかっていてまずいので、真面目に部屋探しを始めた。とはいえこの数ヶ月間で求める条件はほぼ絞り込めていたので、それを打ち込むだけ。

具体的な段取りを踏んでいくにつれ、考えることの多さや選択の重みがしんどくなっていく。今まで対した転機がなかった自分の人生にとって、今後数年間の住処を決めるというのは重大な選択だ。今の自分に現実的な条件を洗い出し物件を絞り込んでいくにつれ、未来にありえた様々な可能性が消えていく感覚がある。家庭を持ったりしたらどうなっちゃうんだろうね。人生の自由というものが時間・金による正の寄与と責任の大きさによる負の寄与で決まるとしたら、時間が寄与してくれた自由のピークを自分は過ぎつつあって、徐々に後者2つの寄与が大きくなってきている。

部屋に当たりをつけて不動産屋に電話した翌日に、もう内見をすることになった。行ってみると、想定していた家賃よりは少し高くなってしまうもののかなり条件が良い物件に巡り会えた。足踏みして別の人に契約されてしまうくらいなら、もう早々にそこで決めてしまうべきではないかということに。トントン拍子で話が進んでしまって若干の恐ろしさを覚える。巡り合わせという言葉はあるけれども、賃貸物件って動く金の大きさの割に流動性が高すぎないか。重い選択も決断するときは一瞬なんだな......。

1/3

奈良美智: The Beginning Place ここから

青森県立美術館で開催されている企画展。ちょっと足を伸ばして観に行った。

奈良美智の作品自体は何かの展覧会で見たことがあったけど、今回はかなり大規模な個展だ。新旧色々ある中でも、去年に発表された「Midnight tears」が一番グッと来た。色使いが綺麗だし、めちゃめちゃ吸い込まれる感じがある。台湾での検疫による隔離期間中に描かれた落書きのような展示では、素朴に絵の上手さを実感した。あとは北海道で撮影された「旅する山子」のシリーズも良かった。オンラインショップにステッカーを見つけたので注文してしまった。転居を考え始めているので、新居に貼るポスターなんかも買ってしまおうかという欲がわく。お気に入りの作品はなかったから買わなかったけど。

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柴田勝家『走馬灯のセトリは考えておいて』

SF作家・柴田勝家の短編集。全体的に「バーチャル」に意識が向いた作品集だった。

「クランツマンの秘仏」は、信仰が質量を持つという思考実験の話。異常論文的で、真実と虚構の境目が曖昧な感じが良かった。(実際に後から調べて虚実を誤認していた点がいくつかあった……。)ただ、冒頭の期待感に比べたら尻すぼみだった感じは否めない。同作者の同種の作品の中では「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」の方が好きだったな。

「異常論文」にも収録されていた「火星環境下における宗教性原虫の適応と分布」は、今度こそ読破しようとチャレンジしたけど無理だった……。宗教の伝播を寄生虫の繁殖になぞらえるアイデア自体は好きなんだけど、話が火星へ飛ぶところでついていけなくなってしまう。

表題作「走馬灯のセトリは考えておいて」はめちゃくちゃ面白かった。死者の生前のデータから生き写しを作る技術「ライフキャスト」を使って、バーチャルアイドルの「ラストライブ」を演出する話。VTuber文化とAI技術を下敷きにした今だからこそのテーマであり、ある種の百合文芸でもあり……。読後はかなり熱い気持ちになった。

 

間宮改衣『ここはすべての夜明けまえ』

SFマガジン2月号に収録。特集が面白そうなので買って新幹線で読んでた。

身体が老化しなくなる融合手術を受けた「わたし」の一人称の形で綴られる家族史。どこか隔世の感がある語りで、「わたし」が歩んできた壮絶な人生が明かされる。その中に挟まれた、自分も馴染み深いボカロ音楽の描写にドキッとした。

 

ブルーピリオド 12巻

気づいたら書店に並んでいた。最近は新刊の発売に遅れて気づくことが多い。コンテンツが溢れすぎている。

ずっと人間の多面性の話をしている。この作者の描く女性のかっこいい顔が好きだな。最近の巻で顕著な気がするが、影を落とした不穏な表情の描写がちょこちょこあって、そこに意図があるのかどうかよくわからない。いやまあ意図してるんだろうが。それがこの作品にじめっとした印象を抱かせる。嫌いではない。

 

帰省

親の車から地元の風景を見ていて、生まれ育った街のことを自分は案外知らないなと思った。時間と金に加えて移動手段も縛られていた中高生時代、生活圏は狭くて、自然と目に入ってくるものは少なかった。市街中心部の道も朧げにしかわからないし、大学に入学してから数回の帰省の中で初めて、住んでいた市の全貌が見えてきた気すらある。

首都圏に住むようになってから、時間と金が増えたことに加えて、主な移動手段が電車になったことによる心境の変化が大きい。行こうと思えばどこへでも行けるという感覚が、その土地のことを今は知らなくても、知ろうと思えば簡単に知ることができるという意識を持たせてくれたのだと思う。それは地元についても同じだった。

生活の変化は、金が許す限りは自分のやりたいことは自由にできるという意識も産んでくれた。ギターとかコンタクトレンズとか、中高生時代にも手に入れようと思えばできたはずなのに、なんでやらなかったんだろうね。受験に対するプレッシャーを必要以上に感じていたこともあるけど。ここ一年くらいで考え始めたことを、今回は再確認した。

 

震災があった。帰省していたこともあって、13年前のことを思い出さずにはいられなかった。全国に知り合いが増えたからこそ、他人事ではない感覚と同時に無力感が深まる。しばらく気もそぞろで、個人的な安否確認の連絡もできなかった。募金とかはできるけど、こういうときどうすればいいのか未だに真の意味でわかっていない。

2023年ベストアルバム10選

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リリース順に。

 

1. カネコアヤノ / タオルケットは穏やかな

このアルバムで初めてカネコアヤノをちゃんと聴いた。表題曲「タオルケットは穏やかな」がシューゲイズだという評判を見かけたことと、曲名の語感の良さに惹かれたのがきっかけだった気がする。ありのままの生活が愛しくなるような曲で、MVは何度観たか知れない。2月頃にたくさん聴いていたのもあって、冬の終わりの暖かい日差しを連想させる。

アルバムとして聴いたときも冒頭の「わたしたちへ」の轟音で一気に心を掴まれてしまった。伸び伸びとした歌声が自然で心地よい起伏を伴っていて、「気分はいつも上がったり下がったり」を体現しているような感じ。この音源は無数にありうる表出のされ方の一つでしかないのだろうなと思う。ライブに行ってみるべきだろうな。


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2. Homecomings / New Neighbors

4月頃にユーフォがアマプラで公開になって、そこで初めてリズ青を観たのがきっかけだった。新譜がリリースされたばかりなのだったらそちらも聴いてみようと。そこで出会った「US / アス」にどハマり。穏やかで優しい歌声に綺麗なアルペジオ、そこにリズム隊が気持ちいい疾走感とダンスミュージック的なノリを加えていて、めちゃめちゃ丁寧で美しい曲だと思う。「ぼくらはたまたまうつくしい」というフレーズもいい。ただ寄り添うこと、それを宣言することの尊さ、そこに偶発的に (いや必然的に?) 生まれる美しさを歌っている。

穏やかなようでしっかり歪んだオルタナサウンドを鳴らしている「Shadow Boxer」に、夜のまどろみをそのまま曲にしたような「Drowse」、シューゲに接近したドラマチックな「euphoria / ユーフォリア」など......。色んな表情を見せる中で、どれもが歌モノで歌詞もいい。いろんなプレイリストに入れたいお気に入りの曲がたくさんある。

新年度から環境が変わって、諸事情につき週一で (午前4時に!) 早起きをする生活を始めた頃に繰り返し聴いていたので、今聴いてもその頃のことを思い出す。全体的に夜から朝にかけてを表現したアルバムなので、その生活にマッチしていた。眠れない夜や早起きした朝に外の空気を吸いながら聴きたい一枚。


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3. The Otals / U MUST BELIEVE IN GIRLFRIEND

「世界一とっつきやすいシューゲイザー」を標榜するユニット。cruyff in the bedroom的な脱力した男声と、フォトハイ的な可愛らしい女声のツインボーカルが癖になる。自称している通りとてもキャッチーで、ジャンルもシューゲとは言いつつボーダーレスな印象を受ける。ただ全体としてギターがめちゃめちゃ歪んでいるのが良い。夏×青春×シューゲという、もはや一分野として確立したテーマでありながらも、カートゥーン的なアートワークも手伝って他とは一線を画したバンドになっている。「そしてチャイナブルー」みたいな直球の曲が強い。絶対にもっと評価されるべきなので、今後の展開に注目したい。

リリースは5月だけど、夏真っ盛りの時期に出会えたのが良かったな。8月に北海道へ旅行したときに、小樽の街並みを眺めながら聴いたのは良い思い出。私の2023年の夏はThe OtalsとMoritaSaki in the poolで構成されている。


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4. Sohbana / 0-0

ボカコレ2023春で聴いた「はなれあうゼロ」が気に入ったから、本当に何の気なしに聴いてみたのが良かった。繰り返し聴いていたのが梅雨の時期なので雨のイメージが強い。「途途れ」「カレラ」「雨は実刑」あたり、楽曲の空白を平板的に埋めるようなバッキングギターがなんか好きだ。1曲目がとおまどのイメソンであることを後から知ったときはさすがに叫んだ。その中で「はなれあうゼロ」みたいな曲がリードトラックになっているのが面白い。

源流には邦楽ロックがあるけど、それもwowaka/ヒトリエあたりのボカロ以後の邦ロックも含めたところにルーツがある。2015年頃、ボカロ音楽と当時隆盛していた国内の4つ打ちロックに同時にハマっていたので、その頃を想起させるような楽曲群だ。(全然網羅できているわけではないけども) 現役のボカロPの中では一番自分のボカロの原体験に近い音楽をやっていて、それも今の流行に合うようなアップデートをされていてとても良い。


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5. colormal / diode

2つのEP「anode」「cathode」を合わせて「diode」。特にanodeは2022年に擦り切れるほど聴いたので、その当時の印象の方が強い。ポップな歌メロとガチガチのオルタナサウンドが見事に調和していて、J-POPリスナーとしてもオルタナロックリスナーとしても大満足。アルペジオが生み出す情感、ストロークの歪みどれ一つとっても自分の好みにぶっ刺さりなギターサウンドを聴かせてくれる。ギターに感情が宿っているってこういうことだと思う。

ディスクユニオンで予約購入したのも良い思い出だ。フィジカル盤の受け取りを楽しみにする気持ちは忘れないでいたい。その特典だった「発光」も名曲なんだよな。このアルバムを聴くときには絶対に最後に再生するようにしてるし、この曲があるからこそ、diodeが単なる2つのEPのまとめではなく、一枚のアルバムとして完成したものと思ってる。イエナガ氏ありがとう。リリースパーティに行けなかったことが本当に惜しい。


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6. Galileo Galilei / Bee and The Whales

正直リリース直後に聴いたときには全然刺さらなかった。当時Twitterでよく見かけた評判の通り、BBHFと同じじゃんと思ってしまったから。BBHF自体とても好きだけど、「PORTAL」や「ALARMS」あたりの作風を期待してしまっていたところがあった。でもふとしたきっかけで聴き直したときに、新鮮な気持ちでいいなと思えた記憶がある。Porter Robinsonとのコラボのときだったかな......。あれも良かったな。

とにかく「このメンバーで音楽をやれることが嬉しい」という気持ちが全面に表れているのが良い。節々にBBHFではないGGとしての自然体の音を感じることができて、昔のGGに無理に回帰しようとしない姿勢にむしろ信頼感を抱いた。「死んでくれ」が一番好きです。ぎょっとするタイトルの中身が直球のラブソング。

フェスで演奏する姿を近くで見れたのも良かった。既存曲もたくさん演ってくれて、その中でも活休前から格段に進化した「星を落とす」は2023年に見た中でも屈指のベストアクトだった。


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7. 君島大空 / no public sounds

2023年1月にリリースされた「映帶する煙」の方はそんなに刺さらなかったけど、こちらは一聴で食らってしまった。繊細な歌声を静かに聴かせるようなミュージシャンなのかと思っていたから、ダイナミックで遊び心に溢れた本作を聴いて心底驚いた。1曲目「札」の攻撃的なイントロが何度聴いても良いんだけど、収録するタイミングが違えば全く違ったものになっていたんじゃないかというライブ感がある。歌詞もそう。

世界の禮

極光由来

潔白と是を包する間

お前だけ、きっっつい時差

誘惑を要する頬!

これどういうことですか?

一番好きなのは「c r a z y」。肩を掴まれて揺さぶられているような、隣で優しく語りかけてくれているような不思議な感覚で、めちゃめちゃかっこいい。「讃歌」や「16:28」のように普遍的だけど唯一無二の美しさを備えた曲もある。「- - nps - -」にはまさにこの作品で大事にしているような、未整理で偶発的な音楽の尊さが宿っている。誰に勧められるでもなく、自発的にふらっと聴きにいった先で出会えたことが嬉しい作品。


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8. MyGO!!!!! / 迷跡波

オタクに勧められて聴いたらそのオタクよりもハマってしまった。アニメよりも先に曲から入ったタイプ。あえて結束バンドと比較するなら、こちらの方がパンク・ハードロック寄り?もはやストイックとも言える (ストリングスやシンセを挟まない) 純粋なギターロックは両者に通じるものがある。結束バンドはそんなギターロックにアニソン的な歌唱が乗っているのが面白いのだと思うけど、MyGO!!!!!は可愛らしさを抑えた透明感のあるボーカルなのが特徴的。それでも歌詞の聞き取りやすさはさすが声優の力というべきか。

何よりもポエトリーリーディングが作品の中核にあることに驚いた。amazarashiのポエトリーには個人的にすごく馴染みがあったし、アメリカ民謡研究会やMOROHAなど、多様なジャンルでポエトリーリーディングが受け入れられ始めている感覚はあったけど、こういうストレートな邦楽ロックでやるのは自分には新しかった。アニメを見ればそれが必然的であることがわかるけど、高松燈の背景や歌声があって初めて実現できていることだと思う。最初は素直にブチ上がれる「迷星叫」や「壱雫空」が好きだったけど、今では「詩超絆」が心を掴んで離さない。アニメ10話は20年代屈指の名シーンです。本当に。もう2つあるポエトリー曲「潜在表明」と「音一会」にもそれぞれ異なる良さがあります。

結束バンドと同等かそれ以上に面白いことが実現できているバンドだと思うので、もっと注目を浴びてほしい。


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9. ひとひら / つくる

バンド自体はリリースの1ヶ月くらい前に友人から教えてもらって、ちょうど聴くようになっていたところだった。ダチ、タイミング完璧すぎる......。the cabs由来のエモ・マスロック的な要素にシューゲイズの要素が加わり、めちゃめちゃハイレベルなバランス感覚を持ったバンドだ。前作も良かったんだけど、このアルバムは飛び抜けて凄い。全12曲、合計36分が途切れず繋がっていて、1つの長大な曲のようにも思える。

1曲目「つくる」の徐々に加速し発散する幕開けから、轟音で激情を鳴らす「国」→「Seamless」への接続が気持ちよくて仕方ない。技術を見せつけるような演奏ではなくて、曲の纏う切なさにアルペジオが常に寄り添っている。インストバンドからの影響を公言しているように歌詞は少なめなんだけど、点在する歌に確かなメロディセンスを感じるし、言葉はこれより多くても少なくてもいけないというような気にさせる。

MyGO!!!!!と同時期に聴いていたこともあって、インディーズバンド - アニソンの対比と情感豊かな歌メロやアルペジオの類似性から面白いリスニング体験ができていた。ひとひら、今年は絶対にライブで観たい。


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10. THE NOVEMBERS / The Novembers

THE NOVEMBERSは間違いなく好きなバンドなんだけど、今まであまり丁寧に追えていなかった。活動初期の「picnic」と「The Novembers」(後者は今作とは別のセルフタイトルEP)、それと2016年リリースの「Hallelujah」が気に入って雑に聴き齧っていた程度だったのだが、今作はそれらが持つ異なる良さを融合したようなアルバムだと思った。荒々しいバンドサウンドに陶酔的なボーカルが乗っかっていて、違う世界に連れて行ってくれるような魅力がある。

これを書きながらYouTubeで検索してみて初めて知ったけど、アルバムのどの曲もシングルカットもMV化もしてないんだ。ライブで先行販売していたことは知ってたけど、かっこいいな......。正直まだあまり聴き込めてはいないが、今後繰り返し聴くことになりそうなのでこの中に選んだ。このバンドの歴史も含めて、これからもっと味わっていきたい。


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10枚の中からあえてベスト3を選ぶとしたら

  1. ひとひら / つくる
  2. 君島大空 / no public sounds
  3. Homecomings / New Neighbors

かな......。2位と3位は悩む。「つくる」はエモ・シューゲイズという自分の近年の嗜好にガッチリとハマってくれた大傑作、「no public sounds」と「New Neighbors」はオルタナを素地に自分の好みをさらに押し広げてくれた作品のような気がしている。

アルバム単位では、実際には今年によく聴いていた去年リリースの「結束バンド」(結束バンド)や、バンドとしての強さを見せつけられた「ひみつスタジオ」(スピッツ)なども入れたかった。あとはPeople In The Boxと羊文学の新譜もまだ聴き込めてないな......。バンド単位では多次元制御機構よだか、Blurred City Lights、MoritaSaki in the poolあたりも今年のリスニングを特徴づける良い出会いだった。ベストソングというところで言えば、ノウルシ「燃え残りの日々」とキタニタツヤ「青のすみか」は間違いなく入ってくる。

今年はもっとライブにも足を運んでいきたい。

最近読んだ本

相沢沙呼『invert 城塚翡翠倒叙集』

城塚翡翠シリーズ、続編の文庫化を待ち続けて早二年……。結局単行本を友達から借りてしまった。

前作である意味「手の内」を明かした後だったので、続編はどうするんだろうと思ってた。3つの中編集で、犯人側の視点から語られる部分が多く、犯行の中身よりもむしろ翡翠の推理を読者に推理させるのが面白い所だった。というかそれが倒叙という手法なのか。

「雲上の晴れ間」と「泡沫の審判」が良かった。時代の閉塞感とマッチした犯人の不憫さ。だいぶフィーチャーされていたカップリング要素にはあんまり乗り切れなかった。

 

柳田國男遠野物語 全訳注』

(結局行けなかったのだけど)遠野に行く計画があったので半分くらい読んだ。この全訳注が出たのがちょうど最近で、タイミングも良かった。

現地の人から聞き取ったことを綴った、あくまで事実に基づく記述であるということが強調されていて、それでいてナラティブとしての性質も強くて不思議な読書体験だった。「平地人を戦慄せしめよ」というキラーフレーズの良さ。

 

高野史緒グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船』

茨城県土浦市版の、よりSF色が強い「君の名は。」とでも言うべき内容。同じ2021年、インターネットができたばかりだが宇宙開発が進んだ夏紀の世界と、宇宙開発は発展途上だが量子コンピュータが実用されている登志夫の世界が、飛行船「グラーフ・ツェッペリン」の記憶を巡って交錯する。

実家に帰省しているときに読んでいたので、夏紀の住む土浦市のちょうどいい地方都市感と自分の地元がリンクして、中高生時代の夏休みを思い出しながら読んでた。

色んな細々とした描写にあまり必然性を感じなくて、SFとして綺麗なストーリーだとは思わなかった。でもそれで良かったのかもしれない。作者の書きたいことに付き合ってなんとなく雰囲気を楽しむような読み方になった。

 

伊与原新『八月の銀の雪』

自らの人生に様々な悩みを抱えた主人公たちの精神的な歩みを描く5編の短編集。地球科学的なモチーフが多数登場するのは同作者のこれまでの作品通りだけど、それを物語の本筋に絡める精度が確実に上がっている気がする。特に「10万年の西風」は鮮やかだった。気象観測に原発風船爆弾に......。場面転換がほとんどなく、主人公と、それを導く老人の会話だけで進むのもすごい。それぞれの短編の流れが型にはまりがちな感はあるが。ストーリーとして一番良かったのは表題作の「八月の銀の雪」。日本で苦労しながらも研究者を志す留学生の描写はかなり勇気づけられるものがあった。

 

田近英一『凍った地球』

地球史学、地球惑星システム学の第一人者が、地球の歴史に全球凍結状態があったことが示されるまでの研究の過程を綴った本。自然科学系の研究者が書く本は飽きずに読み進められるかかなり分かれるところがあると思うけど、これは全然飽きずに面白く読めた。現実に観測できず、その痕跡を辿ることでしか調べられないような現象を扱う分野はすごくミステリー的で、ハマる人はハマるんだろうなと思った。

 

米澤穂信氷菓

米澤穂信作品が好きなら古典部シリーズもちゃんと読破しておこうと思い立ち、唯一持っていたこれを読み返した。でもやっぱり「儚い羊たちの祝宴」とか「満願」あたりの作風の方が好きだな。「愚者のエンドロール」も買ったのでこれから読む。

 

北村紗衣『批評の教室 ——チョウのように読み、ハチのように書く』

作品に対する批評をいかにして行うかを解説した本。批評をするにあたっての姿勢とか、その指針がわかりやすく示されていて、自分もちゃんと批評文を書いてみたいという気持ちになった。「ごんぎつね」とか有名な映画とか、多くの人が知っている作品を引き合いに出してくれているのも嬉しい。でもやっぱり徹底した精読や周辺知識の収集は要求されるものであって、大変だなあ......とも思う。